多様な個性を活かすための教育

子どもたちはそれぞれ異なる個性を持っています。得意なこと、好きなこと、学び方のスタイルも一人ひとり違います。しかし、現在の教育は一律のカリキュラムに沿って進められることが多く、すべての子どもにとって最適な環境とは言えません。本当に多様な個性を活かすためには、どのような教育が必要なのでしょうか。

子どもの興味の尊重

まず大切なのは、何よりも「子どもの興味を尊重すること」です。
子どもの純粋な興味に対して、大人の好みや、将来役に立つ・立たないなどの価値観を押し付けるかたちで判断すべきではありません。子どもの興味の尊重の仕方として、たとえば、ある子どもが昆虫に興味を持ったとします。その場合、単に教科書に載っている内容を学ばせるのではなく、実際に野外へ出て観察できるようにしたり、子どもが試したいやり方や調べたいやり方を聞き、その思いに寄り添い実現するために何ができるかに真剣に向き合うべきです。また、昆虫についての知識をまとめて発表する機会を作れば、プレゼンテーション能力や文章力も育ちます。このように、子どもの興味を出発点とすることで、主体的な学びが生まれるのです。

多様な学びのスタイルへの理解

次に、「多様な学びのスタイルを認めること」も重要です。
たとえば、視覚的に理解するのが得意な子どもには図や映像を活用した学習が効果的ですし、体を動かしながら学ぶことで集中しやすくなる子どももいます。一方で、じっくりと読書をして理解を深めるのが向いている子どももいます。こうした違いを尊重し、それぞれに合った学び方を取り入れることで、子どもたちは自分に合った方法で知識を吸収できるようになります。

既存の枠を超えたアクセス

また、「学校の外の世界とつながる機会を増やすこと」も、個性を伸ばすうえで有効です。
例えば、アートが好きな子どもは、美術館やアーティストの工房を訪れることで新たな刺激を受けるでしょう。数学が得意な子どもは、実際の企業でのデータ分析の仕事を体験することで、自分のスキルが社会でどう活かされるのかを実感できます。このように、学校の枠を超えた学びの場を提供することで、子どもたちは自分の得意なことをさらに伸ばすことができます。

評価の柔軟性

さらに、「評価の仕方を柔軟にすること」も、多様な個性を活かすためには欠かせません。
従来の教育では、テストの点数や成績表が評価の中心となりがちですが、それだけでは子どもの能力を正しく測ることはできません。たとえば、ある子どもは文章を書くのが苦手でも、口頭で説明することが得意かもしれません。その場合、レポートではなくプレゼンテーションで評価する方法も考えられます。評価の方法に幅を持たせることで、子どもたちは自分の強みを活かしながら成長することができます。

多様な個性を活かす教育とは、すべての子どもが自分らしく学び、成長できる環境をつくることです。そのためには、子どもの興味を尊重し、多様な学び方を認め、学校の外の世界とつながる機会を増やし、評価の仕方を工夫することが必要です。一人ひとりの違いを受け入れ、その子らしい学びを支える教育を目指していきたいものです。

代表理事 荒井 顕壱