自身の生き方への気づき〜Life of Wonder

大切に続けてきた「ふるさとスクール」が、今年も無事に終わりました。子どもたちを迎えてくださった地域の皆さん、一緒に旅をつくってくれた仲間たち、参加してくださったご家族に、心から感謝しています。

今回の旅は、私自身にとっても、教育を通して何を届けたいのかを、あらためて考える時間になりました。
ふるさとスクールで大切にしてきたことと、今、北軽井沢で取り組んでいる新しい学校づくり。その根っこにある思いが、旅の中での対話を通して、少しずつ言葉になってきました。

少し長くなりますが、今の気持ちを書いてみようと思います。

振り返ると、私の歩みは、思いがけない出会いに何度も助けられてきました。

たまたま出会った人。
偶然訪れた土地。
何気なく交わした会話。
迷いながらも踏み出してみた一歩。

そのときにはわからなかったことが、ずっとあとになってつながる。誰かの言葉に背中を押されて、思ってもみなかったことに挑戦する。
「まさか、こんなことにつながるとは」
そう驚くたびに、出会った人たちの顔が浮かびます。

もちろん、思い通りにいかなかったことも、立ち止まったこともあります。
今も、答えが出ていないことはたくさんあります。

それでも、遠回りの途中で出会えた人や、うまくいかなかったからこそ気づけたことが、次の一歩を支えてくれることがありました。
自分で選んで歩いてきたつもりでも、一人ではここまで来られなかった。そのことを、年々感じるようになっています。
今回、対話の中で気づいたのは、子育てでも、教育の場でも、私は子どもたちに、そんな出会いや発見の面白さを手渡したいのだということでした。

世界には、まだ知らない面白さがある。
誰かとの出会いで、新しいことをやってみたくなる。
今は意味のわからない経験が、いつか自分を支えてくれることがある。
子どもたちにも、それぞれのペースで、そんな瞬間に出会ってほしい。
何もかもを自分で計画し、その通りに進めることだけにとらわれず、偶然の出会いに心を開き、ときには流れに身を委ねながら、その先にある景色を楽しんでほしい。
人生のもつ不思議な運命や、豊かな流れを味わってほしい。
計画を立てて進むことも大切にしながらも、予定と違うことが起きた時にも、「ここには何があるんだろう」と心を開けたらいい。ときには立ち止まったり、寄り道したりしながら、自分なりの面白さを見つけていってほしい。

それは、自分の子どもにも、教育を通して関わる子どもたちにも、共通する願いでした。

実は、私自身は学校があまり好きではありませんでした。
決められた仕組みや進み方にうまくなじめず、葛藤することもありました。将来の目標から逆算して進むという考え方にも、どこか窮屈さを感じていたのかもしれません。
それでも、さまざまな職種や立場で、ずっと教育に関わってきました。
それは、人が「自分はできる」と気づく瞬間や、「やってみよう」と一歩を踏み出す場面に立ち会うことが、うれしかったのだと思います。
どうすれば、そんな機会をつくれるのか。迷い、試しながら歩いてきた中で、大切にしたい思いが育ってきました。

今回の旅で、それがふと言葉になりました。

Life of Wonder ― 好奇心と感動に満ちた人生を。

何気ない対話の中で口にした言葉でしたが、これまでの経験と、子どもたちに届けたいものがつながった気がしました。

好奇心を持って、世界に向き合うこと。
心が動いた瞬間を、大切にすること。
思いがけない出会いから、自分の新しい一面に気づくこと。
大きな出来事でなくてもいいのだと思います。「なんだろう」「もっと知りたい」「もう一度やってみたい」。そんな小さな心の動きが、毎日を面白くしてくれる。

ふるさとスクールでも、そうした出会いや発見の余白を大切にしてきました。
その土地で何を学ぶかを、最初からすべて決めてしまうのではなく、実際に身を置いて、心と体で感じてみてほしい。

風の冷たさや、土や木々の匂い。
初めて見る景色に、思わず足を止めること。
そこに暮らす人の話を聞いて、もっと知りたくなること。
予定していなかった出来事に、夢中になること。
何に心が動くかは、一人ひとり違います。その経験がいつ、どんな意味を持つのかも、その場ではわかりません。
話を聞いていないように見えても、耳に残っている言葉があるかもしれない。うまく説明できなくても、心に残っている景色があるかもしれない。
すぐに感想や成果として表れなくても、その子の中では何かが始まっている。そんな可能性を、急いで答えを求めずに見守っていたいと思っています。
10年後、20年後、旅の記憶がふとよみがえることもあるでしょう。

子どもの頃に見た自然の美しさが、疲れた日にほっとする時間をくれるかもしれない。
旅先で受け取った優しさが、誰かに声をかけるきっかけになるかもしれない。
初めて触れた文化や暮らしが、新しい挑戦につながるかもしれない。
いつか「あのときの経験が、ここにつながっていたんだ」と思えるものが、一つでも残ったらうれしいです。
予定を詰め込みすぎず、目の前の「気になる」に立ち止まれる余白を、これからもつくっていきたいと思っています。

今、北軽井沢で取り組んでいる学校づくりも、この願いにつながっています。
地域や社会に開かれ、いろいろな人や文化、自然に出会える場所をつくりたい。
一人ひとりの「好き」や「気になる」から、世界が少しずつ広がっていく。誰かと一緒にやってみることで、一人では思いつかなかったことが生まれる。
そんな経験を重ねていける教育の現場をつくっていきたいと思っています。
そこでは、大人も学ぶ仲間でありたいです。
知らないことを面白がったり、失敗してやり直したり、誰かに教えてもらったり。私自身も、子どもたちと一緒に驚き、考え、挑戦していきたいと思います。

今回のふるさとスクールは、自分が何に心を動かされ、子どもたちに何を手渡したいのかを、確かめる旅になりました。
長い間、うまく言葉にできなかった思いが、いろいろな場所での経験や、皆さんとの対話を通して、ようやく形になってきた。今はそんな感覚があります。
これまで、さまざまな地域で迎えてくださった皆さん、一緒に悩み、動いてくれた仲間たち、そしてご縁をつないでくださった皆さん。本当にありがとうございます。

これまでの出会いから、次は何が生まれるのだろう。そう考えると、また一歩、踏み出してみたくなります。
これからも、迷ったら話を聞き、面白そうだと思ったら勇気を出してやってみる。その積み重ねを大切にしていきたいです。
Life of Wonder。
子どもたちにも、大人にも、「もっと知りたい」「やってみたい」が生まれる場所へ。
今年の経験を力に、次の挑戦を始めていきたいと思います。

荒井 顕一